1. 本講義ノートについて
この講義ノートでは、特定の映像素材を前提とはしていない。Premiereの基本機能と編集の流れを紹介している。実際の授業では、授業内で撮影した動画や著作権フリー楽曲をもとに編集演習を行う。
1. Adobe Premiere Proとは
Adobe社が開発・販売しているビデオ用編集ソフトウェア。タイムライン編集(※)を基本としているが、エフェクト等をAfterEffectsのようにキーフレームで編集することもできる。
公式ウェブサイトの情報が充実しているので、チュートリアルだけでも学ぶことが可能。
※After Effectsでもタイムラインパネル内にレイヤーを重ねていくので「タイムライン編集」の言葉の位置付けは微妙なところ。公式サイト(After Effects と Premiere Pro の違い)では、Premiereのタイムラインにクリップを並べて編集する手法をタイムライン編集と呼んでいる。After EffectsはPhotoshopのレイヤーに時間軸を持たせたコンセプトであり、レイヤーベースの概念で説明されることもある。
上画像のアニメーションは(c) Erika Oda
2. Davinci Resolve(紹介のみ)
Adobe Premiere Proと並んで、多くビデオ編集で利用されているソフトウェア。有料版と無料版があり、無料版でも十分使える機能を持っている。
3. Frame.io(紹介のみ)
Frame.ioは映像制作におけるクラウドベースの共同コミュニケーションツール。オンライン上で映像のチェックと修正点の指示出しを行うことができる。Premiere ProやAfter Effectsで利用可能。
オンラインでの共同編集を行えるわけではなく、あくまで編集段階の映像のチェックや指示出しを行う機能。クライアント、ディレクター、エディターのように役割分担がはっきりした映像制作で効率的なコミュニケーションが行うことができる。
参考)
4. Premiere Proチームプロジェクト機能(紹介のみ)
チームプロジェクト機能を使えば、遠隔地ユーザー間での映像の共同編集が可能になる。
手順概要:
・Adobe CC付属のCreative CloudフォルダーやDropbox等のオンラインストレージサービスでメディアファイルを共有する。
以降、Creative Cloudフォルダーの場合
・Creative CloudデスクトップアプリからCreative Cloudフォルダーの保存場所を確認しておく。
・Creative Cloud Webでフォルダを作成する。
・Creative Cloudフォルダーの共有フォルダはデフォルトで閲覧のみなので「共有者を招待」から編集権限ありに変更する。
・チームプロジェクトを作成する。
・共同編集者を追加する。
・チームプロジェクトファイルはローカルには保存されずにクラウド上に存在することになり、Creative Cloudフォルダーで共有したメディアファイルにアクセスすることになる。
・通常のプロジェクトファイルとチームプロジェクトは相互変換が可能。
・Adobe CC付属のCreative CloudフォルダーやDropbox等のオンラインストレージサービスでメディアファイルを共有する。
以降、Creative Cloudフォルダーの場合
・Creative CloudデスクトップアプリからCreative Cloudフォルダーの保存場所を確認しておく。
・Creative Cloud Webでフォルダを作成する。
・Creative Cloudフォルダーの共有フォルダはデフォルトで閲覧のみなので「共有者を招待」から編集権限ありに変更する。
・チームプロジェクトを作成する。
・共同編集者を追加する。
・チームプロジェクトファイルはローカルには保存されずにクラウド上に存在することになり、Creative Cloudフォルダーで共有したメディアファイルにアクセスすることになる。
・通常のプロジェクトファイルとチームプロジェクトは相互変換が可能。
5. シーケンスの位置付けと使い方
5.1 Premiereの作業の流れ
Premiereではシーケンスを作成してから、そこに動画、静止画、音声の素材データ(クリップと呼ばれる)を配置して編集を行う。最終的に書き出される完成データのフォーマット(解像度、フレームレート等)はシーケンスの設定に依存する。
5.2 シーケンスの入れ子(紹介のみ)
Premiereでは複数のシーケンスを作成することができる。また、下図のようにシーケンスの中にシーケンスを入れる(入れ子)ことで子シーケンスはクリップと同等に扱えるので、階層化した編集や、シーン毎に編集した複数のシーケンスの合体、フォーマットの変換等、多様な編集を行うこができる。
6. フォルダの作成
適当な場所にフォルダ(名称任意、下図ではpremiere_project)を作成する。さらに、そのフォルダの中に動画データ(footage, videos)や音声データ(audio)を入れるフォルダを作成する。それらをmediaフォルダでまとめてもよい。
Adobe Premiereに限らず、映像編集では多数のファイルを扱う。データの種類や撮影日時などでフォルダ分けして管理することでデータ紛失を防ぎ、効率的な映像編集を行うことができる。上図の方法は一例なので、それぞれの制作状況に合わせてフォルダを構成してほしい。
7. 素材の準備
7.1 動画データ
編集演習用の動画データを配布する。先ほど作成したfootageフォルダにコピーする。
7.2 楽曲データ
YouTube Studioオーディオライブラリでは、著作権フリーの楽曲が多数公開されている。課題作品では他の音源を利用してもよい。
練習用としてYouTube Studioのオーディオライブラリを利用する。検索窓で「Meet & Fun」で検索する。
下図右側のダウロードをクリックする。
ダウンロードしたMeet & Fun! - Ofshane.mp3をaudioフォルダに移動する。
ダウンロードしたMeet & Fun! - Ofshane.mp3をaudioフォルダに移動する。
7.3 ライセンスについての注意
各種素材データサイトでは、楽曲データに限らず、静止画、動画の様々なライブラリが公開されている。各コンテンツにはライセンスの条件が設けられており、コンテンツによって、利用範囲や公開範囲、クレジット表記に関する条件が異なるので、よく確認してから利用する。
下図はYouTubeオーディオライブラリのライセンス表記。
7.4 都立大ロゴ
都立大学生、教職員は届出なしで利用可能。利用にあたってはマニュアル等を確認すること。
授業内で、背景黒用に調整したものを配布する。
7.5 トランジションデータの配布
トランジション用のアルファチャンネル付きデータを配布する。
7.6 全データとフォルダの構成
8. Premiereの起動
2022年10月現在はAdobe Premiere Pro 2023が最新のバージョン。本記事では、Adobe Premiere Pro 2022を利用しているが、どちらのバージョンを利用しても問題ない。ただし、2022年4月のバージョンアップでユーザーインターフェースが刷新されているので、その場合はアップデートが必要。
プロジェクトとシーケンスの作成方法は複数存在する。様々な制作状況に合わせて選択することができる。ただし、慣れていない初心者は混乱するので、方法①をオススメする。
8.1 方法① 空のプロジェクトを作成 ※授業での方法
下図の新規プロジェクトをクリックする。既存のプロジェクトファイルは「プロジェクトを開く」もしくは「最近使用したもの」から開くことができる。
読み込みモード(プロジェクト作成含む)が表示される。
プロジェクトの保存先右側のプルダウンリストを開き、一番下の「場所を選択」をクリックする。
先程作成したフォルダを選択して、右下の「選択」ボタンをクリックする。
プロジェクト名(任意)を変更する。下図ではedit_****(日付)。
読み込みモード右下の作成ボタンをクリックする。
空のプロジェクトが作成される。
インストール後の初回起動で学習パネルが表示されていれば、パネルを閉じる。次回からは表示されない。表示したい場合は「ウィンドウメニュー > 学習パネル」で表示。
8.2 方法② プロジェクトの作成と同時に素材からシーケンスを作成
プロジェクト作成時に素材を読み込み、下図右側の「シーケンスを作成」をONにしてプロジェクトを作成する。素材の読み込みだけを同時にする場合は「シーケンスを作成」はOFFにする。
9. ユーザー・インターフェース
9.1 UI概観
9.2 各種モード
2022年のアップデートでUIが刷新され、左上部に「読み込み」「編集」「書き出し」のメニュー(=モード)が追加された。特に「読み込み」と「書き出し」の使い勝手が変わっているので注意。
9.3 ワークスペースの切り替え
ワークスペースとはパネル配置のプリセットであり、作業状況によってワークスペースを切り替えながら効率的に編集を行うことができる。旧バージョンでは右上に表示されていたワークスペースの切り替えがアイコン表示でまとめられている。
9.4 各パネルの選択状態
どのパネルを選択しているかによって処理プロセスに影響する。メニューで選択できる内容が切り替わるものもある。選択されたパネルは縁に青いラインが表示される。意図しない処理になっている場合はパネルの選択状態を確認してみよう。
10. 素材の読み込み
複数の方法があるので、状況に合わせて選択する。
方法① 読み込みモードから(紹介のみ)
読み込みモードに切り替える。
右側の「シーケンスを新規作成する」をOFFにしておく。
必要な素材を選択して、右下の「読み込み」ボタンを押す。
方法② メニューから(編集モード)
編集モードに切り替える。
ファイルメニュー > 読み込みをクリックする。
必要なファイルを選択して、右下の「読み込み」ボタンを押す。
方法③ プロジェクトパネルから(編集モード)
プロジェクトパネルの空いているところをダブルクリックする。以降は方法②と同じ。
方法④ プロジェクトパネルへドラック&ドロップ(編集モード)
階層のあるフォルダ構成ごとドラック&ドロップすることも可能(11.2にも関連す)。ただし、すべてのフォルダが反映されるわけでないないようだ。今回配布しているデータではfootageフォルダは反映されるが、audioフォルダは解除される。
11. プロジェクトパネルの操作
11.1 表示切り替え
プロジェクトパネル左下のボタンでリスト表示とアイコン表示を切替えることができる。クリップが動画の場合、アイコン表示にマウスオーバーのスクラブにより内容を確認できる。
11.2 素材の整理
※授業内で配布した動画データ、都立大ロゴデータ、ダウンロードした音楽データを読み込んで整理する
プロジェクトパネルでは、ビンと呼ばれるフォルダのような機能を追加することができる。ただし、ビンはFinder上のフォルダとは連動しない。
プロジェクトパネル右下の新規ビンをクリックして作成する。
ビンにクリップをドラック&ドロップして下図のように整理することができる。
12. シーケンスの作成
方法① 空のシーケンスを作成 ※編集演習での方法
ファイルメニュー > 新規 > シーケンスをクリックする。
もしくは、プロジェクトパネル上で右クリックして、 新規項目 > シーケンスをクリックする。
シーケンスプリセットは、バージョン2024以降ではHD 1080p > HD 1080p 29.97fpsを選択する。バージョン2023ではAVCHD > AVCHD 1080p30を選択する。
必要に応じてシーケンス名(任意、デフォルトはシーケンス01)を変更して、OKボタンを押す。
プリセットに存在しないフォーマットは「設定」タブから作成可能。
プロジェクトパネル内にシーケンスが作成されて、空のタイムラインが表示される。
方法② シーケンスの作成 ※状況によりこの方法の場合あり
プロジェクトパネル内の動画データをタイムライン(シーケンスなし)にドラック&ドロップする。この方法では、シーケンスのフォーマットを動画データから自動的に判定させて作成する。出力データのフォーマットとして問題ないか、元の動画データのフォーマットを確認しておく必要がある。
この方法ではシーケンス名は元のクリップ名になるので、必要に応じてシーケンス名を変更する。
すでにシーケンスが1つ以上存在している場合はこの方法は不可能なので、プロジェクトパネルのクリップを右クリックして、「クリップに最適な新規シーケンス」から作成する。
13. プロジェクトの保存
映像編集ではアプリケーションに負荷がかかり、突然終了することも多い。こまめな保存をおすすめする。
ファイルメニュー > 保存をクリックする(Cmd+S)。
最初に作成したフォルダにはPremiereのプロジェクトファイル(.prproj)の他Auto-Save等のフォルダが自動作成されている。
PC環境の移動やバックアップの際はフォルダごと行う。
14 ファイルの収集(参考)
PC環境の移動の際、異なる場所に散らばった素材を整理する場合等、プロジェクトファイルやリンクしている素材を一箇所にまとめてコピーすることができる。
ファイルメニュー > プロジェクトマネージャーを開き、必要な設定を行いOKを押す。