1. はじめに
1.1 Adobe After Effectsとは
After Effectsは、2Dアニメーション、モーショングラフィックス、3DCG合成、カラーグレーディング、VFX(特殊効果)等、幅広い用途で用いられるソフトウェア。多数のレイヤーにキーフレームアニメーション処理を行うことから、Photoshopの動画版とも呼ばれることもある。高機能なエフェクトやプラグインにより、特異なソフトウェアとして進化している。
上画像のイラストレーションは(c) Kana Kitamura。
1.2 After Effectsの位置付け
下図は、映像作品の構成例を図にしたもの。映像作品ではPremiereのようなビデオ編集(タイムライン編集)を行う部分と、オープニングシーケンスやVFX、3DCG合成のように短い時間の中で細かく調整が必要な部分があり、After Effectsはこのような制作に適している。Premiereが長尺(分単位以上)の編集に利用されるのに対して、After Effectsは秒単位、フレーム単位のアニメーション、エフェクト、合成等に利用される。
Premiereの編集概念は「シーケンス」=「連続したつながり」であり、クリップを連続して配置していくタイムライン編集作業であるのに対して、After Effectsの編集概念は「コンポジション」=「構成、組み立て」であり、レイヤーを多数重ねて、キーフレームを追加していくキーフレーム編集を基本とする。近年ではPremiereにもAfter Effectsに近いキーフレーム編集が追加されており、Premeireとも重なる機能が増えてきている。
Premireの中にAfter Effectsのコンポジションを読み込んだり、After EffectsでPremireのシーケンスを読み込むことも可能で、相互連携しながら映像作品の制作を行うことができる。
下映像はAfter EffectsとPremiereの違いを解説したもの。
2. 膨大なプラグインとスクリプト
After Effectsには100種以上のプラグイン(=エフェクト)が搭載されており、サードパーティー製含めて数百種のプラグインが存在する。現在のAfter Effectsに搭載されているプラグインも元々は別会社で開発されていたものをAdobeが買収したものも多い。
プラグインは日本国内ではFlashbackで購入することができる。海外メーカーサイト直販で購入できるものもあるが、Flashbackが国内販売権を有しているものも多い。
それぞれのプラグインは単純なエフェクト的なものから、プラグイン単体で一つのソフトウェア並みの機能を持つものもある。また、手動で行うには手間のかかる作業を自動化するスクリプトも有料無料含めて多数公開されている。プラグインやスクリプトを含めて、After Effectsを一度に理解することは困難であり、料理のレシピを覚える感覚で、実現したい映像表現に絞ってやり方を覚えていくことが修得の第一歩だと言える。
(参考)
3. チュートリアル紹介
これまで述べたように、After Effectsは基本機能に加えて、プラグイン独自の操作方法やノウハウが存在する。プラグインの使い方は、YouTube、メーカーのサイト等、様々なチュートリアルが公開されている。以下、一部を紹介する。
3.2 Video Copilot
After Effectsのプラグインを開発・販売するVideo Copilotのウェブサイトでは、After Effectsのチュートリアルが多数公開されている。
3.3 ayato@web
ayato@webこと藤井彩人氏のサイト。近年の更新頻度は低いが、After EffectsのVFXの基本を学ぶことができる。
4. コンポジションの位置付けと使い方
4.1 After Effectsの作業の流れ
After Effectsではコンポジションを作成してから、そこに動画(フッテージ)、静止画、音声の素材データをレイヤーとして読み込んでエフェクトやキーフレーム等の設定を行う。最終的に書き出される完成データのフォーマット(解像度、フレームレート等)はシーケンスの設定に依存する。
4.2 コンポジションの入れ子
After Effectsでは複数のコンポジションを作成することができる。下図のようにコンポジションの中にコンポジションを入れる(入れ子)ことも多い。子コンポジションは各種素材データと同等に扱うことができる。Premiereのシーケンスとは異なり、コンポジションの入れ子はIllustratorのグループ化に近いイメージ。エフェクトによっては子コンポジションに設定を行う必要があるものもあり、コンポジション同士の関係が複雑になっていくので慣れが必要。
4.3 プリコンポジション
下図のようにフッテージ(動画)にプリコンポーズを行うことで、子コンポジションの作成と同時にその中にフッテージを移動させることができる。元のフッテージに適用されていたエフェクトやキーフーレームはそのままフッテージに適用したままにするか、子コンポジションに適用するかを選択できる。エフェクトでの設定時やレイヤーが複雑になったときの整理等、プリコンポジションを用いることは多い。
5. 素材の準備
After Effectsではモーションタイポグラフィのように素材がなくてもコンテンツを制作できる。最初の段階では、素材は使わず演習を進める。
必要に応じて、写真の撮影・編集等の作業や、講師から素材データを配布する。
6. フォルダの作成
Premiereでの映像制作と同じく、プロジェクト用のフォルダ(名称任意、下図ではae_project)を作成して、そのフォルダ内に素材データを格納するmediaフォルダを作成する。今回は素材データは利用しないが通常は動画や静止画等を入れるフォルダとなる。あくまで一例なので、制作物に合わせてfootageやaudioフォルダ等も追加しながら整理してほしい。
7. After Effectsの起動
インストール後の初回起動で学習パネルが表示されていれば、パネルを閉じる。次回からは表示されない。表示したい場合は「ウィンドウメニュー > 学習パネル」で表示。
8. 新規プロジェクトの作成
ホーム画面が表示される。左上の「新規プロジェクト」をクリックする。
慣れてくれば、右上の「情報を非表示」をクリックしてチュートリアルは非表示にしておく。
慣れてくれば、右上の「情報を非表示」をクリックしてチュートリアルは非表示にしておく。
空のプロジェクトが表示される。
9. プロジェクトファイルの保存
「ファイルメニュー > 別名で保存 > 別名で保存」をクリックする。
2回目の保存からは「ファイルメニュー > 保存」をクリックする。
2回目の保存からは「ファイルメニュー > 保存」をクリックする。
10. コンポジションの作成
10.1 ゼロから新規コンポジションを作成(今回の方法)
以下の3つの方法がある。
方法① コンポジションパネルの「新規コンポジション」ボタンから
方法② プロジェクトパネルの何もない場所で右クリクメニューから
個人的にはこの方法を使うことが多い。
方法③ コンポジションメニュー > 新規コンポジションから
コンポジション設定は、ここでは広く普及しているFull HDサイズで作成する。
・コンポジション名:コンポ1(初期値のまま)
・プリセット:HD・1920x1080・29.97fps
・デュレーション:5;00(初期値のまま)
・プリセット:HD・1920x1080・29.97fps
・デュレーション:5;00(初期値のまま)
10.2 素材(フッテージ)からコンポジションを作成(省略)
素材の画像サイズやフレームレートを自動的に反映したコンポジションを作成することができる。
11. ユーザー・インターフェース
11.1 UI概観
UIの見た目はPremiereに近いと思えなくもないが、After Effectsではタイムラインにレイヤーを多数配置して、キーフレームの編集を行っていくスタイルであり、クリップベースのPremireとは大きくアプリケーションの設計コンセプトが異なる。
11.2 各パネルの選択状態
どのパネルを選択しているかによって処理プロセスに影響する。メニューで選択できる内容が切り替わるものもある。選択されたパネルは縁に青いラインが表示される(下図)。意図しない処理になっている場合はパネルの選択状態を確認してみよう。
11.3 ワークスペースの切り替え
作業に応じてワークスペース(パネル配置のプリセット)を切り替えることができる。授業ないでは「標準」での説明を行うが必要に応じて変更してもよい。以下の2つの方法がある。
UI右上から切り替える方法。
ウィンドウメニューから切り替える方法。
11.4 ワークスペースのリセット
パネルのサイズ変更や意図しない誤操作でワークスペースのレイアウトが元に戻らなくなった場合には、リセットすることで初期状態に戻すことができる。
12. 平面レイヤー
12.1 平面レイヤーの作成
平面レイヤーは単純なベクター図形だが、マスクや各種マット、エフェクトでの利用等、様々な用途に用いられる。今回は背景色として用いる。
以下の2つの作成方法がある。
タイムラインで右クリックして表示されるメニュー「新規 > 平面」から作成する。
もしくは、「レイヤーメニュー > 新規 > 平面」から作成する。
平面設定では以下を設定する。
・幅:1920 px、高さ:1080 px 初期値にはコンポジションサイズが入力されるので変更なし
・カラー:クリックして任意の色に変更する
・カラー:クリックして任意の色に変更する
タイムラインに平面レイヤーが作成される。プロジェクトパネルでは自動的平面フォルダが作成され、その中に平面フッテージとして保存されるので再利用も可能。
12.2 作成後の変更
タイムラインで平面レイヤーを選択した状態で「レイヤーメニュー > 平面設定」をクリックする。作成時と同じダイヤログで変更できる。