1. RE:Flex Motion Morph(動画モーフィング)
ここでは動画同士のモーフィング手法について紹介する。
動画モーフィングではフレーム毎にマスクパスのキーが必要になるので、静止画モーフィングと比較して作業に時間がかかる。
2. 動画モーフィングの演出上の注意点
モーフィングはそれ自体が奇抜な映像表現のため、適切な場面で使わないと効果的ではなく、陳腐な表現にもなり得る。モーフィングだけでは成立しづらく、髪型や衣服等の形状変化も合わせて、さりげなくモーフィングが加わっているものも多い。
下映像ではモーフィングプラグインのRE:Flexの他に2Dイメージを3D化させるFreeFormを利用して、シャツ、ジャケット、ヘルメットの変形を実現している(mettleブログ)。
今回の演習では、動画モーフィングの基本的な方法は紹介するが、トライ&エラーが必要な作業が多い。ある程度完成してからしかクオリティの良し悪しが判断しづらいため、作り直しが発生することが多々ある。VFX全般に言えるが、これらのノウハウは時間をかけて積み上げるしかない。
素材映像撮影の注意点として、モーフィングは1秒程度の短い時間で行うことが多いので、あらかじめどの部分でモーフィングさせるか決めて撮影にのぞむ必要がある。全体の動きのタイミングはタイムリマップ機能で後から調整できる。タイムリマップでスローにする可能性もあるので、可能な限りフレームレートは高めで撮影しておく。
3. RE:Flexデモ版の表示を目立たなくさせる方法
詳しくは授業内で紹介する。
・素材画像をできるだけ高解像度にする(静止画はプリコンポーズでも処理が軽いので可能)
・エフェクト > キーイング > 色範囲でデモ表示の色指定
・下レイヤーに素材をクロスフェードさせたものを配置する
4. 課題演習
4.1 課題内容
・使用する素材:pete.mp4、richard.mp4
・提出データ:MP4
・提出方法:メールでギガファイル便で提出。課題共有Scrapboxへは中安がアップロードする。
4.2 素材動画の準備
ここではRE:Flexのマニュアル付属のデータを利用する。
Macでは/Applications/REVisionEffects/REFlex5AE/REFlex5AEManual/movies/の中にpete.mp4、richard.mp4(下図)が含まれている。
下図のように、適当なフォルダ(下図ではmotionmorph_tutorial名称)を作成して、その中にpete.mp4、richard.mp4をコピーする。AEプロジェクト(.aep)も同じフォルダの中に作成していく。
今回は、解像度を擬似的に上げたデータ(pete1080.mp4、richard1080.mp4)を利用する。
4.3 コンポジションの作成(motionmorph_output)
動画2つをプロジェクトパネルの読み込み、2つとも選択した状態で右クリックする。メニューの「複数アイテムから新規コンポジション」をクリックする。もしくは、2つをドラッグして、プロジェクトパネル下の新規コンポジションを作成アイコンにドラックアンドドロップする。
下の設定では、何も変更せずにOKを押す。
コンポジション名称は、motionmorph_output(任意)に変更する。
4.4 RE:Flex Motion Morphエフェクトの設定
タイムラインのpete.mp4(スタート側映像)を選択した状態で、エフェクトメニュー > RE:Vision Plug-ins > RE:Flex Motion Morphをクリックする。
Motion Morphを適用した直後は、Warp "To" Layerが指定されていないので、赤透過されて下のレイヤー画像が表示される。
Warp "To" Layerにrechard1080.mp4を指定する。
Demo版の場合コンポジションパネルに☓印とRE Vision Effects社名が表示される。
4.5 Global WarpとGlobal Blendのキーフレーム設定
以下のように、RE:Flex Motion Morphエフェクトのキーフレームを追加して設定する。
<0フレーム>
Global Warp: 0%
Global Blend: 0%
<22フレーム>
Global Warp: 100%
Global Blend: 100%
この時、Display: Wrapped and Blended(変形有り、融合有り)であることを確認する。プレビー再生してクロスディゾルブのように変化することを確認する。
4.6 UNwrapped "From"でマスクパスを描く
Display: UNwrapped "From"に切り替えた状態で、マスクパスを描いていく。
下図では左眉(マスク名称from_left_eyebrowに変更)のパスを描いた状態。静止画とは異なり、動画の場合はすべてのフレームを通してパスが対象物に沿ってアニメーションさせておく必要がある。コツとして眉毛に合わせるというよりも骨格に合わせて描く。
時間インジケータもしくはタイムコードで5フレームずつずらして変形させていく。最初の0フレーム目ではストップウォッチアイコンをONにして、次のフレームからはパスを動かすだけでキーフレームが追加される。
4.7 マスクパスを描くコツ
Illustratorのベジェ曲線に近い操作だが若干異なるので注意。ベジェ曲線に慣れていない場合はベジェ曲線特訓で練習する。
コンポジションパネルの移動・スケールは以下。
・手のひらツール:スペースキー+左ドラッグ
・ズームツール:スクロールホイール
パスの描画と編集は、下図のペンツールと選択ツールを切り替えながら行う。
ペンツールは長押しすると下図のように切り替えることができる。実際には、頂点の追加や削除は状況に応じてカーソルが自動で切り替わる。頂点切り替えツールはOptionキーでも操作できるのでメニューでの切り替えはほとんど使わない。
一つのパスを描き終わったら、選択ツールに切り替えておく。頂点の移動は選択した頂点周りであればペンツールでも可能だが、パスを閉じる場合もあるので、選択ツールに持ち替えて行う方がミスが少ない。
マスクパスの描画は、慣れるまで誤操作が頻発する。不要なクリックで異なるマスクの作成、レイヤー非選択状態でペンツールを使ってシェイプレイヤーを作成してしまう場合もある。タイムラインの状態を確認しながら、Cmd+Zで取り消すなどして、丁寧に操作していく必要がある。
4.8 UNwrapped "To"でマスクパスを描く
Display: UNwrapped "To"に切り替える。動画はrichardに切り替わる。
新規にマスクパスを追加してもよいが、ここではすでに描いたfrom_left_eyebrowをコピーする。コピーはCmd+C、Cmd+Vでもよいが、Cmd+d(複製)で一度にできる。
マスクパスの名称をto_left_eyebrowに変更する。マスクカラーもfrom_とは異なる彩度の高い色に変更する。
タイムラインのfrom_left_eyebrowにロックをかけた状態で、to_left_eyebrowのパスを選択ツールでrichardの眉毛(骨格)に合わせていく。
キーフレームに移動して、マスクパスをすべて修正していく。このときfrom_とは異なる動きがto_にあった場合は、from_にはないキーフレームを追加する場合もある。キーフレームの数は重要ではなく、それぞれの被写体に合わせたマスクパスのアニメーションが設定されている必要がある。
4.9 Wrapped and Blendedの確認
マスクパスのロックは外してfrom_とto_の両方のパスが表示されている状態にする。Display: Wrapped and Blendedに切り替えて、モーフィングの状態を確認する。まだ眉毛だけなので途中経過状態。
4.10 Auto Hide Show Splines
Auto Hide Show Splinesは、Displayの設定と連動して、マスクパス(=Splines)のレイヤーのロックを切り替える機能。通常はONにしておいたほうがマスクパスが編集しやすい。
ONの状態で、以下のような動作となる。
Wraped and Blended(変形有り、融合有り):すべてのマスクパスを非表示
UNwraped "From"(変形なし):from_のマスクパスを表示
Wraped "From"(変形有り):すべてのマスクパスを非表示
UNwraped "To"(変形なし):to_のマスクパスを表示
Wraped "To"(変形有り):すべてのマスクパスを非表示
from_とto_はあくまで2組のマスクパスの1番目か2番目かで判定されている。名前は任意。
4.11 その他の機能
・Auto Align
自動的に特徴点を解析して処理する機能。デフォルトでOFF。素材によってはこれだけでも良い結果が出る場合もあるが、ONにした方が崩れる場合もあるので、ON/OFFの状態を確認してから判断する。
・Hold Edges
モーフィング処理により画像のエッジが崩れるのを固定する機能。デフォルトでOFF。対象物がフレームにあまり接近していない場合はONでよいが、ONにしたことでモーフィング処理にも影響しすぎる場合はOFFにして、エッジ処理は別レイヤーの画像等で行う。
・Match Vertices
from_とto_で頂点位置も影響させる機能。デフォルトでON。頂点位置の変化がfrom_とto_で異なる場合はOFFにする。
4.12 最終状態
マスクパスの作成と調整を繰り返して完成させる。下図では、from_とto_含めて20個のマスクパス。作業時間は1〜2時間程度。1秒に満たない映像なので、かなりの労力が必要なことがわかる。
この実験では、目の部分の手間を省いたので若干ぼやけている。髪の毛の生え際等、細かくマスクパスを追加していけば、より自然なモーフィングになる。
5. チュートリアル映像
下チュートリアルは、https://help.revisionfx.com/album/24/#/tutorial-122でサンプルデータをダウンロード可能。
下映像では、RE:Flexは使わず、Liquify Toolで変形させている。髪の毛の処理等参考になる。
全身の激しい動きのモーフィング。https://help.revisionfx.com/album/24/#/tutorial-194でサンプルデータがダウンロード可能。このような制作を行う場合は、高速シャッタースピードでフレームレートの早い撮影を行っておく必要がある。スローモーションで処理した後、通常スピードへの変換を行う方がクオリティの高い映像が制作できる。
Back to Top