1. コマ撮りとは
コマ撮り(ストップモーション)は、静止している物体を少しずつ動かしながら撮影する撮影手法のことであり、コマ撮りで制作したものはアニメーションと呼ばれる。絵や人形だけでなく、人間を撮影したものでもコマ撮りで撮影したものはアニメーションと呼ぶ。
コマ撮りの代表的なものと言えばクレイアニメや人形アニメが挙げられる。コマ撮りから生まれる独特の動きを生かした作品が制作されている。近年では、コマ撮りのみで映像制作を行うのではなく、デジタル技術やコンピュータグラフィックスを取り入れた作品も発表されており、映像の制作技術は多様化している。
映画の撮影手法としても現在のデジタル映像技術やコンピュータグラフィックスが出現する以前では、コマ撮りで撮影された人形を実写映像と合成する映画も多く存在する(例:ターミネーター(1984)、ジュラシックパーク(1993)、List of stop motion films)。このような撮影手法は、着ぐるみと模型を使ったゴジラの撮影手法やエイリアンのアニマトロニクスと並んで特撮(特殊撮影、SFX)と呼ばれる。
2. コマ撮りによる映像表現
コマ撮りはあくまで撮影手法であり、そこから生まれる表現には多様なものが存在する。
ここではコマ撮りによって制作された映像作品をいくつか紹介する。
Ishu Patel “The Bead Game”(1977)
伊藤高志 “SPACY”(1981)
宇佐美毅 “Gluebe”(2007)
BLU “MUTO”(2008)
Oren Lavie, Yuval and Merav Nathan “Her Morning Elegance”(2009)
竹内泰人 “オオカミとブタ”(2009)
Guillaume REYMOND “Pac-Man”(2010)
The Olympic Winter Games - Trailer
The White Stripes - Hardest Button To Button (Official Music Video)
ミュージックビデオ界の鬼才ミシェル・ゴンドリーによるMV
HIDARI(Pilot Film)
川村真司監督によるストップモーションアニメーション作品。現在クラウドファンディング中。
3. Bullet Time(タイムスライス、マシンガン撮影)
映画『マトリックス』の中で注目されたのが、Bullet Time(タイムスライス、マシンガン撮影)と呼ばれる手法。1878年にエドワード・マイブリッジ(当ページバナー画像も)が撮影した『動く馬』が源流と言われており、その後の様々な作品のアイデアが積み重なって生まれた映像表現である。
メイキングを見ればわかるが、映像を動画として捉えるのではなく、コマとコマの連続であることを応用した撮影手法であり、アナログとデジタルの両方が融合して生まれた表現だと言える。
頑張ればスマートフォンだけでも制作可能。
下映像はBBC TV Series "Sherlock"の1シーン。
4. いろいろなコマ撮りの方法
4.1 フィルム時代のコマ撮り
磁器テープ時代のビデオカメラや現在のデジタルカメラのように動画として撮影することが前提の装置と異なり、フィルム時代の映画のカメラは、もともと機構によって1コマの写真を連続して撮影するものであり、撮影速度(1秒間に撮影するコマ数、ビデオ時代以降はフレームレート?)を変更できるものが多かった。劇場用の35mmカメラだけでなく、ビデオカメラが隆盛する以前のニュース撮影や自主映画で使われていた16mmカメラにはコマ撮り機能があるものが存在し、家庭向けの8mmカメラでも撮影速度を1コマに変更してコマ撮りを行うことができた。特にセルアニメでは、マルチプレーンカメラという特殊なカメラを用いている。
4.2 コマ撮り専用装置(旧機器)
PCで動画編集が難しかった時代の装置として、Lunch Box(日本代理店(販売終了42万円)、アメリカ本社)がある。ビデオカメラ(SD画質)とモニターを繋ぐだけでコマ撮りアニメーションがを制作することができた。
4.3 スマートフォンを使ったコマ撮り
現在ではスマートフォンやタブレットだけでコマ撮りが可能で、誰でもストップモーションアニメーション作品を作れる時代になっている。
4.4 Dragonframe(PCベースのコマ撮り)
音と同期させるリップシンク機能、照明をコントロールするDMXやedelkroneのモーションコントロールカメラに対応した高機能なプロ向けのコマ撮りソフト。撮影対象のオブジェクトをどの程度動かすかを補助する機能DRAWING TOOLSを使えば、プロのアニメーターでなければ実現できない動きを簡単に撮影することができる。ストップモーション・アーティスト竹内泰人さんも利用している。価格は年間サブスクで120ドル程度。
5. インターバル撮影
インターバル撮影は、低速度撮影や微速度撮影、Time-lapseとも呼ばれる。一定時間毎のコマ撮りとも言えるが、その時間を超えた独特な映像効果は様々な作品中で使われている。植物の成長や、花の咲く様子、雲の流れ、夜の町並みを車の光が流れる様子などに使われている。
Henry Jun Wah Leeの作品は特に圧巻。Henry Jun Wah Leeの作品では、モーションコントロールカメラも使われているように見える。手動のドリーやクレーンかもしれないが。
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