1. はじめに
1.1 パペットツールとは
After Effectsに実装されているパペットツール(Puppet Tool)は、2D画像にピンを追加するだけで、画像を自動メッシュ化してアニメーションを行うことができる強力なツール。イラストの2Dアニメーションだけでなく、実写の疑似アニメーション等、アイデアしだいで様々な表現に応用できる。特に、限られた素材や制作時間の中での映像制作にとって、使い勝手のよいツールとして利用されている。PhotothopやIllustratorにもパペットワープ機能が実装されており、画像変形にも利用できる。時間軸のあるアニメーションを制作するにはAfter Effectsを用いる。
1.2 チュートリアル事例
YouTube等に多数のチュートリアルが紹介されいる。
2. 関連技術
2.1 五十嵐健夫先生の研究
・Takeo Igarashi, Tomer Moscovich, John F. Hughes, "As-Rigid-As-Possible Shape Manipulation", ACM Transactions on Computer Graphics, Vol.24, No.3, ACM SIGGRAPH 2005, Los Angels, USA, 2005(PDF).
2.2 Muti-Input Touch Screen by Jeff Han
Jeff Han氏のマルチタッチのデモンストレーションの中でパペットツールに相当する技術のデモが含まれている。初代iPhoneが2007年に発売される1年前にこのレベルのマルチタッチが実現されている。
2.3 Adobe Character Animator
Adobe Character Animatorは、リアルタイムモーションキャプチャ(フェイシャル、ボディ、リップシンク)とレコーディングシステムを統合した2Dキャラクターアニメーションシステム。2015年にAfter Effectsの追加機能としてプレビュー版が登場したが、2017年に独立したアプリケーションとしてリリースされた。2D画像をメッシュ化して変形する基本技術はパペットツールと同じだが、モーションキャプチャと組み合わせることで、これまでの2Dアニメーションのワークフローを変える新しいツールとして、2020年に全米テレビ芸術科学アカデミー技術エミー賞を受賞している。
3. 今回の目標
下映像のようにティラノサウルスの人形が呼吸しているように動かしてみる。
ピンは7つだけで、キーフレームはピンそれぞれに3つの時間位置に追加している。
4. 素材の準備
4.1 撮影
人形あり、なしの2種類を撮影する。画が変化しないように、ホワイトバランス、フォーカスはマニュアルで撮影する。
4.2 写真の加工①
人形あり写真から、Photoshopの被写体の選択等の機能を利用して、人形のみで背景透過の画像(photoshop形式 or png)を作成する。
4.3 写真の加工②
加工①の人形写真に背景のみの写真を合成しても違和感が出る。
人形なし写真に人形あり写真から影の部分のみ合成する。授業では加工済のものを配布する。
5. プロジェクト準備とコンポジションの設定
下図のように、素材(実際の構成と異なる)とAfter Effectsのプロジェクトを保存する。
以下の2つの画像(1920 x 1080 px)を利用する。
Full HD(1920 x 1080)のコンポジションを作成する。デュレーションは5秒。
trex.pngとbackground_shadow.jpgをコンポジションに配置する。
6. パペット位置ピンツールの設定
時間インジケータを0フレームの位置に移動する。
パペット位置ピンツールを利用して、下図のように7個のピンを設定する。
タイムラインパネルのtrex.pngレイヤーを選択して、Uキーを押すとキーフレームのあるプロパティのみが表示される。下図のように0フレームに各パペットピンのキーフレームが追加されていることがわかる。
7. アニメーションの設定
以下の手順で下図のようにキーフレームをコピー&ペーストする。
1. 0フレームの7個のキーフレームをドラッグ選択してコピーする
2. 時間インジケータを最後のフレーム(4;29)に移動して、ペーストする
3. 0フレーム(or 4;29フレーム)のパペットピン5〜7までのキーフレームをコピーする
4. 時間インジケータを真ん中あたり(任意)に移動して、ペーストする
時間インジケータを真ん中のキーフレームがあり場所に移動(完全に一致した場所)する。3つのキーフレームを下図のように選択する。
コンポジションパネルでは3つのピンが選択された状態(3つのみ中まで黄色の●)なので、どれか一つをドラッグして、ティラノサウルスが少しだけかがんだ状態にする。
このままでは直線的な動きとなるので、キーの設定をリニアからイージーイーズに変換する。
下図のように全てのキーを選択する。
上の方法が難しい場合は、下図の部分をドラッグしてもよい。「位置」の名称部分をSHIFTキーを押しながらクリックしてもよい。
どれでもよいので、キー上で右クリックして表示されるメニューから「キーフレーム補助 > イージーイーズ」をクリックする。
キーアイコンが知らずのように切り替わる。
減速と加速が緩やかに変化することで、アニメーションの動きが滑らかになる。
プレビュー再生してアニメーションの状態を確認して、修正したい場合は、時間インジケータを真ん中のキーフレームの位置に移動させてから、ティラノサウルスのピンをドラッグして調整する。
8. 書き出し(課題提出)
mp4に書き出す場合はAdobe Media Encoder経由で行う。Media Encoderの使い方は以下参照。
9. その他の事例(いらすとや)
9.1 獅子舞のアニメーション
9.2 素材の準備
いらすとやサイトから「獅子舞に頭を噛まれる人のイラスト(男性)」をダウンロードする。
透過png画像なので、加工なしで利用できる。
9.3 パペット位置ピンツールの設定
After Effectsに読み込み、パペット位置ピンツールで6個のピンを設定する。背景はそのままでは黒になるので、必要に応じて獅子舞レイヤーの下に平面レイヤーを追加する。
9.4 エクスプレッション(wiggle)の設定
今回はキーフレームではなく、エクスプレッション(After Effects専用スクリプト機能)を利用したアニメーション生成を行う。
8.3図の①のピンに対応したストップウォッチアイコン(下図)をOPTIONキーを押しながらクリックしてエクスプレッションを有効にする。下図右側のようにwiggle (1, 100)を入力する。wiggleはゆらゆらする動きを生成できる命令。パラメータが2つの場合は順にfreq=動きの速さ、amp=変化の大きさとなる。freqやampの値を変化させると面白い効果が生まれる。
おまけ、いらすとや素材で作成された映像作品。
10. その他の事例(大木写真)
10.1 大木が揺れるアニメーション
10.2 素材の準備
​​​​​​​​​​​​​​写真素材サイトphotoACの画像を利用する。photoACの利用にはアカウント作成必要。
下記URLからMサイズ(1920 x 1280 px)をダウンロードする。
ダウンロードした画像から、Photoshopの「被写体の選択」等の機能を利用して、大木のみの透過画像(photoshop形式 or png)を作成する。
ダウンロードした画像から、Photoshopの「コンテンツに応じた塗りつぶし」等の機能を使って、大木を消した画像を作成する。
10.3 パペット位置ピンツールの設定
After Effects上で2つの画像を重ねた上で、木のみのレイヤーに対してパペット位置ピンツールで2個のピンを設定する。
10.4 エクスプレッション(wiggle)の設定
9.3図の②のピンに対応したストップウォッチアイコンをOPTIONキーを押しながらクリックしてエクスプレッションを有効にする。下図右側のようにwiggle (1, 100)を入力する。
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