1. 3D スキャンとは
3DCADやCG上でゼロからモデリングするのではなく、現実世界の物体や空間をデジタル化できる3Dスキャン技術が様々な分野で活用され始めている。映画、ゲーム、プロダクト、ファッション、建築、医療、考古学を含めて、あらゆる分野へ広がりを見せており、これまで不可能であった視覚表現や新しい製造手法、物体の解析やアーカイブを可能にしている。
3Dスキャンは技術的にはレーザー型、イメージセンサ型(フォトグラメトリ)、LiDAR型等、複数の手法が存在しており、3Dスキャン装置には、物体、人体や動物、建築物や地形のように、スキャン対象に合わせて、ハンディ型、フォトスタジオ型、360度センサー型、ドローン型等の複数種類が存在する。また、CTスキャンのように断面をスキャンする手法を用いれば、植物のような複雑な形状や昆虫の生体内部の構造を3Dデータ化することも可能である。
下図は、画像の特徴点を解析するフォトグラメトリ手法の図解したもの。
(出典)What is Photogrammetry(Autodesk Recap Pro)
2. 事例紹介
2.1 ノートルダム大聖堂のレーザースキャン
フランスのArt Graphique Patrimoine(AGP)とニューヨーク州ヴァッサー大学准教授、美術史家Andrew J. Tallon(アンドリュー・タロン)博士によるプロジェクト(2014年~2016年)。プロジェクト開始当初はそれほど注目されていなかったが、2019年4月に焼失事故が起こり、歴史建造物を3Dデータとして記録することの重要性が改めて認識された。
2.2 軍艦島3Dプロジェクト
出水享氏(株式会社計測リサーチコンサルタント)のプロジェクト。上図は世界遺産の軍艦島480分の1モデル。世界文化遺産の「軍艦島」をドローンなどを用いて3次元計測を行い、ミマキエンジニアリング製のフルカラー3Dプリンタ3DUJ-553を利用して3Dプリント出力している。
2.3 みんなの首里城デジタル復元プロジェクト
2019年10月、沖縄県において500年の歴史を持つ首里城の大広間と隣接する2つの建物が焼失した。直後、有志のグループによって、当時の姿をデジタル上で構築して、将来の実際の復元に役立てるためのプロジェクトをスタートした。
2.4 都市、地球レベルの3Dスキャン
都市レベルや地球レベルの3Dスキャンも始まっている。
2.5 バーチャルミュージアム
2020年のコロナ禍において、人が集まるあらゆるイベントが中止された。その中で美術館のような展示施設を3Dスキャンしてバーチャル化することで、体験性の高いコンテンツを制作できることが実証された。特に、Matterportのようなシステムが登場して、3Dスキャンとコンテンツ化を短時間が行うことができる環境が整ったことで、イベントのバーチャル化だけでなく、建築現場での活用等、実用目的も含めて、様々な分野での利用が広がっている。
2.6 リバースエンジニアリング
2.7 水中の事例
海底のタイタニック号
マリー アグネス(ポーランドの古い鉱山)
2.8 バイオフォトグラメトリ
2.9 X線CTスキャン
2.10 アートに関する事例
Knowing together: an experiment in collaborative photogrammetry(授業内で紹介)
Watertight(授業内で紹介)
2.11 ゲームへの応用事例
3. 3Dスキャンソフトウェアの種類
3.1 Agisoft Metashape
Agisoft社が開発、販売するフォトグラメトリーソフトウェア。Professional EditionとStandard Editionが存在する。Windows、Mac、Linux環境に対応。
日本の代理店は株式会社オーク。オークのサイト(下記URL)では日本語で使い方やテクニック等、詳細な情報が得られる。
3.2 3DF Zephyr
3DF Flow社が開発、販売するWindows用のフォトグラメトリーソフトウェア。Free、Lite、Pro、Aerialの4バージョンが存在する。Freeバージョンは機能限定版とはいえ最大50枚の写真を解析できる。Liteの体験版とFreeバージョンは異なるので注意。
DF Zephyr Freeバージョンのページ https://www.3dflow.net/3df-zephyr-free/
3.3 RealityCapture
RealityCaptureは業界標準と言えるフォトグラメトリーソフト。2021年にEpic Gamesが買収している。PGM、ENT、CLIでは月額/年額サブスクリプションや永久ライセンス、処理点数に応じた支払いを行うPPIサービスのようにユーザの利用状況に対応できる選択肢が準備されている。
3.4 Audodesk ReCap Pro
Autodesk社が開発、販売するWindows用のフォトグラメトリーソフトウェア。学生・教職員はAutodeskアカウントを作成してアカデミック版(無料)を利用できる。
3.5 ソフトウェア精度の比較
3.6 タブレット端末やスマートフォンのアプリ
PCソフトウェア以外にもタブレット端末やスマートフォンアプリも多数存在する。以下のSCANIVERSEは一例。
3.7 安価高精度なスキャン機器
4. 新しい解析方法の登場
3D Gaussian Splatting
NVS(Novel view synthesis)とは、既存画像や動画をもとに異なる視点の新しい画像を作成可能で、実際に撮影されていない視点の映像や画像も生成することができる。NVSの手法の一つであるNeRF(Neural Radiance Field)では学習や画像生成に時間とコストがかかることを課題となっていた。
3D Gaussian Splatting(3D-GS)は複数の写真から3Dシーンを作成する手法であり、3Dオブジェクトを3D Gaussianという点の集合体として表現することで3Dモデルを生成することができるが静止画に特化した手法であるため動画には適していなかった。SIGGRAPH 2023では、3D-GSを改良した手法が発表されており、動画からリアルタイムに3D空間やモデルを生成することが可能になりつつある。
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