1. 2Dアニメーションツールの分類
ここではキャラクターの登場するアニメーションツールの分類と特徴について解説する。あくまで大きな意味での分類であり、実際のアニメーション制作のプロジェクトでは求める表現に応じて、VFXの後処理含めて、複数のツールを組み合わせて制作を行う。
1.1 Frame By Frame(コマアニメーション)
旧来のセルアニメーションと同じ仕組み。過渡期は紙に描いてスキャンする方法も行われていたが、現在はPC+液晶タブレット、iPad等のタブレット端末でダイレクトにデジタルペインティングするのが主流。コマアニメーションでは一枚一枚作画していくため、アニメーション修正の描き直し含めて、作画に多大な時間を要する。コマアニメーションベースだとしても一部にトゥイーン(変形)を用いるなど、複数のテクニックを利用することも多い。
1.2 2D Puppet Animation
キャラクターのイラストレーションをパーツ分けして、リギング(アニメーションに必要な構造化)を行うことで、キーフレームやビヘイビアによってアニメーションを行う手法。
イラストレーションの変形と組み合わせて疑似3D的な表現が実現できるようになってから、2Dリギングとは思えない高い表現力が可能になっており、効率的なアニメーション制作の一つの手法として確立されている。
 1.3 3DCG Toon Shading(セルルック)
3DCGのShading(陰影表現)をToon(2Dアニメーション)風に行う手法。Cell Shadingやセルルックとも呼ばれる。セルルックを実現するためには対応したレンダラーが必要であり、3DCGソフトにサードパーティーのセルルックレンダラーをプラグインとして追加することも多い。美少女キャラクターのセルルックは3dsmaxとPSOFT Pencil+ 4の組み合わせが有名。Pencil +4のBlender対応版も発表されている。
2. 様々な2Dアニメーションソフト
PCやタブレット端末を利用して2Dアニメーションを制作できるツールが多数存在する。
2.1. Adobe Photoshop
Photoshopは静止画編集だけでなく、タイムラインやオニオンスキン機能を持っており、タブレットと組み合わせて手書きのコマアニメーションを制作することができる。
2.2. Procreate
iPadアプリのProcreateは、ペインティングやイラストレーションだけでなく、アニメーション機能を持つ。Apple Pencilと併用することで直感的な操作感でアニメーション制作が可能。
2.3. CLIP STUDIO PAINT
CLIP STUDIO PAINTは、初学者からプロ用途まで広く普及しているペインティング、漫画制作、アニメーション制作を行うソフトウェア。略称クリスタ。アニメーション業界ではRETAS STUDIOも利用されていたが既に開発終了しており、クリスタが後継の位置づけらしい。
2.4. Adobe Character Animator
Adobe Character Animatorは、リアルタイムモーションキャプチャ(フェイシャル、ボディ、リップシンク)とレコーディングシステムを統合した2Dキャラクターアニメーションシステム。アニメーション作品制作だけでなく、Vtuber制作にも利用できる。表現力としてはLive 2Dが優れている面があるが、Character Animatorはリップシンクを含めたモーションキャプチャやレコーディングシステムが1つのアプリケーション内に統合され、比較的容易に習得できることもあり、初心者~上級者まで利用できる完成度の高いアプリケーションだと言える。
2.5. Adobe Animate(Flash後継)
Flashは、ウェブ上で軽いベクターアニメーションを得意としていたとして普及していたが、セキュリティの問題によりサポートが終了した。Animateには、Flashの特徴的インターフェースが引き継がれており、リアルタイム性の高い操作感でフレームバイフレームでベクターアニメーションを制作することができる。Puppet Animationに必要なリギング機能も実装されている。
2.6. Adobe After Effects
After Effectsは、2Dアニメーション、モーショングラフィックス、3DCG合成、カラーグレーディング、VFX(特殊効果)等、幅広い用途で用いられるソフトウェア。特に、2Dアニメーションの補助的ツールとしてパペットツールが実装されており、イラストに簡単に動きを加えることができるツールとして便利。
Adobe AnimateとAdobe After Effects含めてキャラクター素材はIllustratorやPhotoshopで制作したものを読み込んで利用することが一般的な方法となる。
2.7 Duik Bassel(After Effectsプラグイン)
After Effectsの2Dキャラクターアニメーションプラグイン。
AnimateやAfter Effectsでも2Dキャラクターアニメーションは可能だが、個人的には前述のCharacter Animatorを利用したほうが作業効率は高いと感じる。Character Animatorも元はAfter Effectsのプラグインとして登場したが、独立したアプリケーションとなったことで開発が大きく進んでおり、より高機能で使いやすくなった印象。
2.8. Moho Animation Studio
ベクターベースのアニメーションソフトウェア。リギング、リップシンク機能を持つ。手書きのコマアニメーションではなく、キャラクターにリギングすることで動きを設定することができる。2Dリギングはイラストレーションの変形を設定することで、平面的ではなく3D的な動きを行うことができる。2D制作者にとって扱いやすく、アニメーション表現に集中して制作できる印象。
ゴールデングローブ賞やアカデミー賞ノミネートのBreadwinner(下映像)に用いられた。
2.9. TV Paint
プロフェッショナル用途のペイント系アニメーションツール。日本国内でも利用されているが海外のアニメーション作品でよく使われている印象のソフトウェア。
2.10 Blender - Grease Pencil
3DCGツールのBlenderにはGrease Pencilと呼ばれる2Dペインティングツールが実装されている。
Grease Pencilを利用すれば、画面平面へのFrame By Frameだけでなく、三次元空間上に描くことができるので、3DCGと融合させた表現を生み出すことができる。
3. AIを利用したアニメーション制作
2022年中盤移行に登場してきたコンテンツを生成できるジェネレーティブAI(Midjourney、Stable Diffusion、Chat GPT等々)は急速に発展しており、アニメーション制作のツールにも影響を及ぼしつつある。(2023.4現在の情報)
3.1 Animated Drawings
Animated Drawingsはイラスト1画像を解析してリギングまで行い、アニメーションパターンを選択するだけで動かすことができる。
3.2 Stable DiffusionとmultiControlNetを利用した実写動画からアニメーション生成
Stable DiffusionとmultiControlNetを組みわせることで、実写動画からコマ毎の変換を自動化することができる。ただし、コマ毎に生成し直しているので全体の統一感はなく、コマによって衣服や顔などが変化する。補正する手法も考案されてきており、違和感なく変換できるようになるのも時間の問題かも。
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